「…娘さんっ、ずっと笑っちょってくれ…!」

「龍…馬さんっ…、嫌だよっ…!私っ、まだっ…」

「っ、どうか…元気で…。」


…たとえ、幾度となく時が移ろうと

あの時、あの場所で貴方と結んだ絆は、決してほどけることはない。



「「龍馬さん 」」

おまんがわしの名を呼ぶ、その声。

最後に見せた泣き顔、そして笑顔。


“忘れてしまおう”


そう思う度にわしはおまんを思い出して、

わしの瞳 心に強く焼き付いていった。



おまんの蕾のような手を握ることも、

貴方の温かな手を確かめることすら…


おまんの温もりを感じることも、

貴方の優しい背中を抱き締めることも…

もう、二度と許されない運命なんだと知りながら、


おまんの笑顔に、

…貴方の向日葵のような微笑みに

その消えてしまいそうな涙に

…最後に見せた涙に


そのひたむきな思いに許されるのなら、もう一度だけ…

触れたかった。

心から。



「龍馬さんっ、可愛いお花ですよ!」

「娘さん、好きじゃ…。」

66.jpg

いとしき日々よ、


お願いだから"さよなら"は言わないで…

もう、二度と逢えなくなってしまいそうだから。


貴方に会いたくて、

もう一度、おまんの笑顔に触れたくて、

届くまで叫び続けてしまう…


忘れはしない、この身体が消えてしまっても。

貴方と感じた風、貴方と見た花、

貴方と追いかけた、あの日々。


また、会いたくて---



「龍馬さんに、出逢えて良かった。」

あん子の言葉と共に、

今でもわしの胸に焼き付いているのは、


あん子が未来へ帰る前日に見た、

世界で一番美しい夕日。

67.jpg

--龍馬さん、あの時の貴方の瞳には、

不安なんかよりも何倍も大きな希望が溢れていました。


ただ、その瞳を見つめるだけで私は幸せの全てを知れる気がした。

これから歩む道の先に、

たとえ、どんな哀しみが待っていたとしても、

貴方の最期が、途轍もなく悲しい出来事だと分かっていても。


「ずっとわしの傍に居て欲しい。」

その願いを、

「私も…っ。」


その言葉を、

貴方が流した、ひとすじの光を

守りたかった…いつまでも。


貴方と離れたくなかった...

---

「中岡っ、ちくと軍鶏を用意しとくれんか…。鼻がずるずるじゃ…。」

「全く、あんな格好してるからっスよ…。」

「すまんのう…。」


天保六年 十一月十五日

慶応三年 十一月十五日

貴方が生まれた日。

世界で一番幸福な日。

貴方が去って逝った日。

世界で一番不幸な日。



「娘さん…」

「龍馬さん…」


その笑顔に、

その涙に、

そのひたむきな思いに…


触れたかった、心から。


「龍馬さん!」

いとしき日々よ、

さよならは言わないで。


貴方に会いたくて、

もう一度会いたくて、届くまで叫び続ける…


「ほたえなっ‼」

「--坂本先生。」

「…ん、どちらさんじゃ?」

「先生に御相談がありまして…」

「おおっ、何でも言っちょくれ!のう中岡、何時でも力になるぜよっ。」

「有難う御座います。---坂本先生。」


87.jpg


・・・
・・・・
・・・・・

わしは、忘れん。

この身体が消えてしまっても…ずっとずっと忘れん。


身を任せた風達よ、おまんとみた花達よ、

おまんと、追いかけた明日よ。

また会いたくて---


・・・
・・・・
・・・・・


「…今日って…。」


部屋に飾られたカレンダー。

...日付は、十一月十五日


あっ…。

「っ…龍馬さんっ…。」

“貴方に、会いたい”

どれだけ願ったか覚えていないくらい…切望してるの。


今、歩き出そう。

貴方が探し続けた明日を見るために、

また貴方と、出逢える日のために…。


貴方と追いかけた明日と、また会うために…

いとしき日々よ...


「龍馬さん、愛しています。」


ずっと、貴方を・・・貴方だけを。

お慕い申しておりました---
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