淡い碧色の着物が

     夕暮れの丘に棚引く。




"寒いから。"

と言って抱き締めた、その温もりは
私の髪を乱す様に吹き如く風のように、
儚く消えてしまった。


「恋は、いつか終わります。」

遠い碧空を見つめ、まっすぐに呟いた言霊。

...ぼんやりと考えていた。君の言葉と、私の想い。

永遠とはこんなものなのか、と。

...
....
.....

でもね、君は気付いていたかい?

君の言葉を、私がわざと...聞こえないふりをしていたこと---

96.jpg



もう幾度目かも分からない桜の花弁が、

ゆらりと風に舞った。


時が経っても

決して変わることのない

想いが、此処にある。

97.jpg

舞いゆく桜の中、

逢いたくて逢いたくて堪らない君を、ぎゅっと抱き締めている。


時折、花弁の中に現れる君を

追いかけては、追いかけ、深い迷路を彷徨っている。


「逢いたいんだ。」


夢ではない、本物の君に。

その髪に、ずっと触れていたい。


「でも---、」


もう逢えなくて...。
その手を掴むことは、許されない。


私はまだ、

行き場のない此の想いに、溺れている---



桜の花が散ってしまう、

ほんの少し前に見上げた空。

---肩を並べて眺めた夜空は、

まるで大きな万華鏡を覗いているようだったね。


あの時、君と見た星達は今宵もまた

浮かんでは消えていく。

伝えきれなかった想いは、

いつまでも声に出来ずに残り続ける。

この溜息にそっと包み込み、

吐き出せれば、どれ位楽になれるのだろうか---


季節は巡り、また桜がやってくる。

その風波に流されたとしても、

過去と、未来の狭間の中、記憶が解けない---



---彼女の残り香が漂うこの部屋には

    私の乾いた涙の痕が、
 
       淡い藍色に変わり沁みついている。


綺麗に片づけられた着物と、

101.gif

障子の隙間から覗く月は、

100.jpg

遠く離れた過去と未来を、

優しく繋ぎとめてくれているのだろうか。



あの淡い碧色が、滲んでいく。

世界で最も美しい其の色が消えぬよう、

私は一人、目を閉じた---


「さようなら、晋作。」


そして、

遠く離れてしまった、彼女---

藍色に変わりゆく一滴が、またひとつ。

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